2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

『ヰタ・セクスアリス』の評価:奥野健男氏の『日本文学史』から

森鴎外の『ヰタ・セクスアリス』は、どんな評価を受けているのかな。 というわけで、奥野健男氏の『日本文学史』を紹介する。 深い西欧的教育を持ち、武士的な保守主義者であった森鴎外は 気品のない自然主義文学を苦々しい思いで傍観していましたが、 一方…

『ヰタ・セクスアリス』:森鴎外

番新と女とは三たび目を見合わせた。歯が三たび光った。 番新がつと僕の傍に寄った。 「あなたお足袋を」 この奪衣婆(だつえば)が僕の紺足袋を脱がせた手際は実に 驚くべきものであった。 そして僕を柔かに、しかも反抗出来ないように、 襖のあなたへ連れ…

寒山拾得:森鴎外

「わたしもこれから台州へ往くものであって見れば、 殊さらお懐かしい。序(ついで)だから伺いたいが、 台州には逢いに往って為めになるような、 えらい人はおられませんかな。」 「さようでございます。国清寺に拾得(じっとく)と 申すものがおります。実…